中尊寺讃衡蔵は、旧本尊の阿弥陀如来坐像をはじめ、中尊寺経などの文化財を保管・展示する宝物館です。展示数はそれほど多くありませんが、仏具から奥州藤原氏の副葬品までバラエティに富んでいます。(但し、複製もあります)
遺体が身に着けていた袈裟や枕・首桶などのちょっとエグイ展示品もありますが、美しい千手観音立像や美しい彫金が施された華鬘など、美術品としても価値が高い展示品も多いです。
その中でも特に印象深かったものをご紹介します。
「騎獅文殊菩薩像・四眷属像および螺鈿八角須弥壇」
もともとは経蔵の本尊です(重文)。大きくて立派な八角形の須弥壇の上に、小さめの文殊五尊像が置かれています。
このように獅子に乗り、脇侍4人を従えた姿は、奈良の安倍文殊院の「国宝・渡海文殊」が真っ先に思い浮かびます。それと比べると小さくて見栄えはしませんが、年代はこちらのほうが古いです。
快慶のような有名仏師の作ではないので、からだはデフォルメされていてユーモラスですが、顔は年齢や性格をよく表しています。
特に「優填王像(うでんおうぞう=獅子の手綱を持っている人)」の、まじめな顔でお遊戯しているような格好がかわいくて好きです^^。
何となく仏像より立派に見える八角須弥壇は国宝です。
上下の螺鈿細工の「三錮杵」文様もきれいですが、「迦陵嚬伽(かりょうびんが」の金剛打出しの細工がまさに秀逸。顔とからだのバランスから尾の流れまでデザインも素敵です。
「迦陵嚬伽」とは極楽にいるといわれる想像上の鳥。人頭・鳥身で妙なる声を持つといわれ、よく天井画などに描かれています。華鬘にもあしらわれていますね。
「金光明最勝王経宝塔曼荼羅図」
今回、讃衡蔵の展示物でいちばん感動したのはこれです。
縦長の紺紙に金泥で「金光明最勝王経」というお経1巻分の文字を宝塔型に書き並べたもの。その周りにはお経の内容を絵で説明しています。
「金光明最勝王経」は10巻あるので、宝塔曼荼羅図も10幅あります。
讃衡蔵には2幅展示してあり、どちらも同じ形にできているので感心しました。少し離れたら、見分けが付かないくらいそっくりな宝塔なのです。
「昔の人はなんてすごい技術を持っていたのだろう!」と思っていましたが、じつは型紙があったそうで…^^。
2幅の曼荼羅図に近づいてよく見ると同じ場所の字が違います。当然ですが、ちゃんと違う経文で書かれたものだとわかります。
きっちりとした字で一字も間違うことなく、さらに宝塔の形に合わせて変形させて書いてある様は完璧過ぎて少しうんざりするほど^^;。
でも、あまり足を止めている人はいません。なぜでしょう?
…そう、複製だからです^^。
見ないで通過してしまう人も多いですが、複製には細かい字もはっきりと見やすくしてくれるという利点があります。
御朱印は入口で預けて出口で受け取る
讃衡蔵の展示室は巾着型になっています。
チケットを見せて中に入った後、左手に受付があります。受付の両脇が入口と出口になっているので、展示室に入る前に御朱印帳を預けておくと、出口で渡してもらえます。
御朱印は「丈六仏」。讃衡蔵には3体の丈六仏(旧本尊の阿弥陀如来と薬師如来2体)が安置されていますが、印は薬師如来の梵字「バイ」です。
「桂泉観音」出開帳
私が中尊寺を訪れたとき、天台寺の「桂泉観音」が出開帳されていました(7/30~9/11)。
天台寺は二戸市にある、奥州観音霊場の第33番札所。かつて瀬戸内寂聴さんが住職を務めたことで知られています。
桂泉観音は「鉈彫の観音」として有名で、全体的にオカピのお尻の様な縞々の彫痕があります。
目を閉じた像だと思ってじっくり見ていたら、墨でくっきりと書かれた目と合い、大声を上げそうになりました。(しかもちょっと目つきが悪い^^;)
ちなみに桂泉観音の御朱印として、天台寺の札所の書置きがありました。